その昔、インドにたいそう慈悲深い王さまがいました。ある時、王さまは、“布施行”を思いたち、宝物を山と積んで、貧しい人たちに、一つかみずつ与えることにしました。
人間の心の満足は、お金では買えないと言われるように、信仰もまた、自分の努力なくしては、その神髄に触れることはできません。
私が、未だお坊さんに成りたての頃の話です。近くに初老のご夫婦が住んでいました。
真心の尊さを説くのに〈貧者の一灯、長者の万灯〉という諺(ことわざ)がよく使われます。
親が子を大切に育てることを〈手塩(てしお)にかける〉といいます。
人間、一人でできることなんてたかが知れています。それでは、どうすればいいんでしょう。
江戸時代の商人がいかにあるべきかを説いた本に西川如見という人が書い た「町人嚢(ぶくろ)」という名著があります。
ぜひ、長谷川如是閑さんという人のエピソードを紹介させてください。長谷川さんは新聞社に務めていた人です。
それは木枯らしが吹く、大正十二年の暮れ近くのことでした。
私は怒りっぽい質(たち)です。すぐに、カーッとなる性分で、みんなから「瞬間湯沸かし器」みたいだと冷やかされます。
先日、あるお宅の法事に出掛けた時の事、予定より少し遅れて到着した私に、「みんなが首を長くして待ってますよ」と、奥さんが言いました。
「癌(がん)になってよかった」、そんな事を思う人はいないでしょう。
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