新・仏教説話 第十一話-第二十話

第十八話 水をまぜたミルク

新・仏教説話 第18話 水をまぜたミルク

“水増し”ということばがあります。量をごまかし、他のものをまぜて、人びとをだますことです。もちろん悪いことです。今でも、水増しのお金をもらおうとしたり、してもいない仕事の報告をしたりして、大きな社会の問題になっています。

こんなずるがしこいやり方を、人間はいつごろから始めたのでしょうか。そんなことを考えていたら、ある話を、お釈迦さまのおしえが書かれた本の中で見つけました。

むかし、インドのある町にミルク売りの、おばあさんがいました。来る日も来る日も、町かどに立ってミルクを売るのですが、そんなにもうかりません。なんとかして、もっとかせぎたいと思ったおばあさんは、ミルクに、ほんのちょっとだけ水をたして、ぶんりょうをふやしたのです。そうすると、ほんのちょっとだけ、もうかりました。

これはうまくいったとおもったおばあさんは、さらにもうすこし水をふやしました。するとまた、もうすこしお金がもうかりました。こうなると、おばあさんはミルクを売ることより、お金もうけにむちゅうになってしまいます。

ミルクはどんどん水っぽくなり、町の人びとも、何かへんだなと思うようになりました。そこで、これはいけないと思ったおばあさんは、かせいだお金を宝石にかえて、夜中に町からにげだそうとしました。そして町はずれの川をわたったとき、うっかりと、宝石の入ったふくろを川におとしてしまったのです。

さあたいへん!おばあさんはひっしになって、川の中をさがしました。でも宝石は見つかりません。とうとう夜が明けてしまい、ぐったりしたおばあさんは、川ぎしにすわりこんでしまいました。

ちょうどその時、お釈迦さまが、ちかくをお通りになったのです。

それに気づいたおばあさんは、いっしょにさがしてほしいとたのみました。でも、みんなお見通しのお釈迦さまです。ひとこと、「おばあさん、わるいおこないの報いは、こういうものですよ」とおっしゃったのです。そして「人は、知らず知らずにあやまちを重ね、悪いおこないの水にのみこまれる。

あなたがミルクに水をまぜたために、あなたは大切にしたものを、水に流されたのです。流された宝石は、あなた自身の未来のすがたであると気づきなさい。」とおしえられたのです。

そのあと、このおばあさんは、はんせいをし、町にもどって、人びとにあやまって歩いたといいます。お金もうけは、別に悪いことではありません。でも、「儲け」という漢字を横にわけて読んだら「信者」になるんだと、かってなことをいって、自分だけが良いおもいをするために、人びとから金を集めることばかりをかんがえている新興宗教の教祖さんもいます。これでは、今の話に出てきたおばあさんとかわりありませんね。悪いおこないの水の中に、のみこまれてしまわないようにして、生きたいものです。

(T)

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