子育てに愛情は不可欠です。
ところが、あり過ぎても困るのが、この愛情。
昔から「乳母日傘(おんばひがさ)」の喩(たと)えもあるように、後生大事に育ててばかりいては、子供は出来そこないます。
いわば、それは愛情の逆作用。
発句経には、「愛より愁(うれ)いは生(しょう)じ、愛より怖(おそ)れは生(しょう)ず」との警句が発せられています。
人は、愛する故に悩み、苦しむ生き物なのでしょうか。
お経には、「有情」(うじょう)という言葉も出て来ます。
これは、「衆生(しゅじょう)」と同じく、生きとし生けるものを意味しますが、仏さまは、生きてこの世にあるものは、すべて感情を持つものだとお考えなのです。
だからこそ、私たちが愛や情に溺(おぼ)れ、身を滅ぼさないようにと真理を諭(さと)されます。
それは、仏さまにとって、私たち衆生が、みんな我が子のように思えるから。
時として厳しく戒められるのは、多くの失敗をご覧になっているからです。
子供は、いつの日か一人立ちせねばならないもの。
仏さまの願いも親の願いも、それより外(ほか)ないのですから。