伝道シリーズ第1弾

No.014 恵みの雨

 「鬱」という字は、「ウツ」と読みます。読むのも、書くのも大変な字です。でも、この字でできた言葉を、私たちは、意外と使っているのです。たとえば、ストレスの多い現代社会では、人々の不平不満は、「うっ積」しています。そして、そんな状態が長く続くと、心は「憂うつ」になってしまいます。まして、どんよりした梅雨空と眺めると、気分は、「うっ陶しく」なるんじゃありませんか。
 でも、そんな時、心をなごませてくれるのは、紫陽花の花ではないでしょうか。誰もが、いやがる雨の中で、いきいきしているその姿を見ると、水ってやっぱり大切なんだなと考え直させられます。
 かつて私たちの国、日本には、瑞穂国(みずほのくに)という美しい言葉がありました。瑞穂とは、みずみずしい稲の穂で色どられた平和な世界というのが、古代の人々がイメージした私たちの国ではなかったでしょうか。
 休耕田が増え、荒れ果てた農地が多くなった風景を見るにつけ、渇ききった現代人の心を思わずにはおれません。
 「鬱」には、こんもりと生い茂るという意味もあります。雨を恵みと受けとめる心のゆとりを取り戻したいものですね。
(寺の友社 教宣編集室 謹製)

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