伝道シリーズ第1弾

No.020 仏性の傘

 一日降っただけでも、うんざりする雨。そのくせ人は雨に思いを託し、いろんな詩をうたいます。
 それは渇ききったこの世の中に、せめてもの潤いが欲しいと願うからでしょうか。
 幼い頃うたった♪雨、雨ふれふれ、母さんが、蛇の目でお迎え、うれしいな。ピチピチ、チャプチャプ、ランランラン♪という童謡を思い出します。傘を持って迎えに来てくれた母・・・。時代がドライになればなるほど、こんな情景が懐かしくなるのかもしれません。
 だから人生の寂しさや、やるせなさは、あたかも私たちの心の中に降りしきる雨。誰かがそっと傘を差しかけてくれるのを待っているのです。
 そんな時、出会った人の情けは身にしみます。ずぶ濡れで冷えきった体に、ぬくもりが戻ってくるように「生きていてよかった」という温かい感動が甦って来ます。
 ひょっとしたら私たちは、こんな心のふれあいを知るために、この世に生を受けているのかもしれないのです。
 無情の雨というなかれ。それは時として乾天の慈雨となることもあるのですから。 (寺の友社 教宣編集室 謹製)

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