伝道シリーズ第1弾

No.012 優しさと厳しさ

 子育てに愛情は不可欠です。ところが、あり過ぎても困るのが、この愛情。昔から「乳母日傘(おんばひがさ)」の喩(たと)えもあるように、後生大事に育ててばかりいては、子供は出来そこないます。いわば、それは愛情の逆作用。
 発句経には、「愛より愁(うれ)いは生(しょう)じ、愛より怖(おそ)れは生(しょう)ず」との警句が発せられています。人は、愛する故に悩み、苦しむ生き物なのでしょうか。
 お経には、「有情」(うじょう)という言葉も出て来ます。これは、「衆生(しゅじょう)」と同じく、生きとし生けるものを意味しますが、仏さまは、生きてこの世にあるものは、すべて感情を持つものだとお考えなのです。
 だからこそ、私たちが愛や情に溺(おぼ)れ、身を滅ぼさないようにと真理を諭(さと)されます。それは、仏さまにとって、私たち衆生が、みんな我が子のように思えるから。時として厳しく戒められるのは、多くの失敗をご覧になっているからです。
 それならば、私たちも子育てや人づくりの中に仏さまの教えをいただかねばなりません。
 子供は、いつの日か一人立ちせねばならないもの。仏さまの願いも親の願いも、それより外(ほか)ないのですから。 (寺の友社 教宣編集室 謹製)

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