伝道シリーズ第1弾

No.006 心に咲く花

 百花撩乱(ひゃっかりょうらん)、春は花が主役の季節。出番を待っていたかのように咲き乱れる花々に彩(いろど)られ、自然は躍動し、生命(いのち)の歌を唄います。
 今とばかりに美を競い合う多くの花々。それは、青春を謳歌する若者の姿のようでもあります。
でも「花の生命(いのち)は短くて」と喩(たと)えられるのが、私たちの人生。ただ華やかさを求めるだけでは、悔いが残るばかりです。
 だからこの季節、名もない草花に目を転じてみるのも、また楽しいものです。目を奪われるような豪華な花より、人知れず咲いている野の花に、心安らぐ美しさを発見することがあります。
 かつて俳聖・芭蕉は、その旅の道すがら〈山路来て、なにやらゆかし、すみれ草〉の一句を詠(よ)んだとか。ひっそりと、しかし精いっぱいに咲いている一輪の花に、芭蕉は本当の美しさを感じ、生命(いのち)の尊さを悟さとったのかもしれません。
 見てくればかりに気を取られ、外面を飾るだけでは、鼻につく人間になってしまいます。短い人生だからこそ、精いっぱいに生き、心に咲く花を育てなければなりません。そうすれば、人生、一生青春です。 (寺の友社 教宣編集室 謹製)

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