No.12110 日本禅宗における追善供養の展開

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時代に即して行法を再構築しながら、法灯を発展させてきた禅宗寺院の姿をたどる。


死者供養の観点から、清規を基礎史料として、日本禅宗における供養儀礼や実践の諸相を通史的に取り上げ、追善供養という仏教的な営みを通じて、日本における弔いの歴史を再検討する。

【内容紹介】
各禅宗寺院の恒例行持や臨時行持の行法が記された清規には、死者供養に関わる行法も多数載録されており、禅僧による民衆教化の様態を示す重要な史料である。本書では、この清規を主な史料として、物故者の個別性を前提とする死者供養という観点から、日本禅宗における儀礼や実践の諸相を取り上げ、追善供養の役割や意味を浮き彫りにする。

 第1章では、仏教伝来期の飛鳥・白鳳時代の銘文や寺院建立の目的などから、追善供養の淵源を辿る。奈良・平安朝については、六国史や空海撰『遍照発揮性霊集』、菅原道真撰『菅家文草』、『本朝文粋』所収の願文・表白文を用い、仏像・仏画の作製や写経といった作善の形態、および無遮大会・国忌・七僧法会・法華八講といった仏事の形態を意識しつつ、天皇家・貴族層の事例を論じる。次いで主に『日本霊異記』から、民衆層における実践を考察する。

 第2章では、中世前期を検討する。武家の事例を『吾妻鏡』から確認し、日本最古の清規とされる京都五山東福寺『慧日山東福禅寺行令規法』から禅宗の檀那忌や祠堂諷経といった供養儀礼について論じる。また室町期足利将軍家の事例について確認しつつ、曹洞宗の事例について『瑩山清規』(禅林寺本)や能登永光寺の置文などを検討する。

 第3章では、中世後期を検討する。禅語録所収の香語も史料とし、信濃大安寺蔵『回向并式法』、陸奥正法寺『正法清規』、駿河静居寺『年中行事清規』、遠江普済寺『広沢山普済寺日用清規』、天倫楓隠撰『諸回向清規』といった清規を中心に時系列で比較し、施餓鬼会や観音懺法といった禅宗の行法が導入されていく過程を明らかにする。

 第4章では、まず檀家制度が確立され、幕藩体制の一翼を担った仏教教団における追善仏事の位置づけを、「宗門檀那請合之掟」などから検討する。次いで鈴木正三撰『因果物語』から具体相を捉え、『諸国年中行事』『東都歳事記』から関係する年中行事を取り上げる。

 第5章では、近世の出版文化と供養儀礼との関連を、施餓鬼や観音懺法の行法書などを中心として全体的な状況を確認した上で、無著道忠撰『小叢林略清規』と面山瑞方撰『洞上僧堂清規行法鈔』という臨済・曹洞をそれぞれ代表する学匠が編纂した行法書を考察する。

 第6章では、近世禅宗寺院における具体相を、加賀大乗寺の『椙樹林清規』『副寺寮日鑑』から検討する。とくに財務部の日誌である『副寺寮日鑑』から、施財額によって12段階に設定された追善仏事の格式や、施主の地理的な分布と属性などについて考察する。

 第7章では、彦根藩主井伊家の菩提寺・清涼寺の『海会堂日用毘奈耶』『寿山清規』と、信濃松本藩主戸田家の菩提寺・全久院の『仙寿山全久禅院内清規』、そして本山永平寺の『吉祥山永平寺年中定規』『永平小清規』から、近世藩主家の菩提寺における供養儀礼の状況について検討する。

 第8章では、明治初期に構想された檀那札の制度、壬申戸籍、追善供養の啓蒙書から、死者供養を展開してきた「仏教」に対する国家による位置づけとともに、家族国家観の影響のなかで、僧侶や知識人が追善供養をどのように意味づけたかを論じる。次いで、仏教諸宗派によって展開された戦没者供養の式次第や行法を、曹洞宗の布達から考察する。さらに追善仏事再編の事例として、曹洞宗の行持軌範や行法書を史料として、曹洞宗における追善供養の近代化の変遷を検討する。
 清規や日鑑を基礎史料として民俗宗教的立場で論じる本書から、状況に即して行法を再構築しながら法灯を発展させようとする、禅宗寺院のたくましい姿が見えてくる。

【著者:徳野 崇行( トクノ タカユキ)】
1978年、宮城県生まれ。
駒澤大学大学院人文科学研究科修了。博士(仏教学)。
現在、駒澤大学仏教学部専任講師。
専門は宗教学。共著に『聖地巡礼ツーリズム』(弘文堂、2012年)がある。


仕様 / 商品詳細

主要目次 はしがき
序 論
一 本論の目的
二 清規に関する研究の変遷
三 死者の弔いに関する研究の変遷
四 本書の研究方法
五 本書の構成

【第一部 奈良・平安仏教と中世禅宗における追善供養の展開】
第一章 奈良・平安仏教における追善供養の展開
第一節 造寺・造仏・写経願文と追善供養
第二節 天皇家の追善供養と奈良・平安仏教
第三節 摂関家・貴族における仏事と墓参
第四節 民衆の追善仏事
第五節 『日本霊異記』に見る供養の物語
まとめ
第二章 中世前期における禅宗の追善供養
第一節 『吾妻鏡』に見る武家の追善仏事
第二節 京都五山東福寺『慧日山東福禅寺行令規法』に見る檀那忌
第三節 室町期における足利将軍家の追善仏事
第四節 『瑩山清規』(禅林寺本)に見られる亡者回向と追善供養法
第五節 能登永光寺の置文と布薩回向
まとめ
第三章 中世後期における禅宗の供養儀礼とその多様化
第一節 曹洞禅僧の香語から見た追善仏事の形態
第二節 信濃大安寺蔵『回向并式法』の弔施餓鬼
第三節 陸奥正法寺『正法清規』に見る回向文の増加と懺法亡者之回向
第四節 駿河静居寺『年中行事清規』に見る追善仏事の多様化
第五節 遠江『広沢山普済寺日用清規』に見られる盂蘭盆施餓鬼の
托鉢と結縁施餓鬼
第六節 『諸回向清規』に見る追善供養法
まとめ
【第二部 近世禅宗における追善供養の展開】
第四章 近世檀家制度の成立と供養の物語
第一節 檀家制度の成立と追善供養
第二節 仮名草子『因果物語』から見た死者供養の物語
第三節 近世の地誌から見た年中行事と追善供養
まとめ
第五章 近世の出版文化と供養儀礼
第一節 禅宗行法書の刊行と供養儀礼
第二節 無著道忠撰『小叢林略清規』に見る近世臨済宗の追善供養法
第三節 面山瑞方撰『洞上僧堂清規行法鈔』から見た追善供養法
まとめ
付録史料『如々居士語録』乙巻所収の「施食文」
第六章 近世加賀大乗寺における追善供養
第一節 加賀大乗寺『椙樹林清規』における追善仏事
第二節 大乗寺『副寺寮日鑑』から見た追善供養の展開
まとめ
第七章 藩主家の菩提寺における供養儀礼
第一節 彦根清凉寺による藩主井伊家の追善供養
第二節 信濃松本全久院による藩主戸田家の追善供養
第三節 近世永平寺における追善供養
まとめ
【第三部 近代禅宗における追善供養の展開】
第八章 近代禅宗における追善供養の展開とその再編
第一節 追善供養の近代化と祖先崇拝・先祖供養のイデオロギー
第二節 仏教諸宗派による戦没者供養
第三節 近代曹洞宗における葬儀・追善供養法の変遷
まとめ

結 論
あとがき
初出一覧
参考文献
索 引
著者 徳野 崇行( トクノ タカユキ)
発刊 国書刊行会(2018年2月)
判型 A5判
ページ数 544ページ

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